求人倍率5倍の中で勝ち抜くための地方企業の採用術とは

求人倍率5倍の競争を勝ち抜くための採用戦略を示す地方企業のシルエットが描かれたアイキャッチ画像

求人倍率5倍が意味するもの

今、日本の求人市場は過去に類を見ないほどの競争が繰り広げられています。特に中小企業や地方企業では、求人倍率が「約5倍」という厳しい現状が続いています。

つまり、5社が1人の求職者を取り合う状況です。これは単に「求人が多い」という話ではありません。求職者に選ばれない企業は、いくら求人を出しても応募がゼロということもあり得ます。

このような中で地方企業が採用を成功させるためには、これまでの「ただ募集を出す」だけのやり方を見直し、新しい採用戦略を取り入れる必要があります。本記事では、地方企業が勝ち抜くための具体的な採用術をご紹介します。

目次

課題の把握:なぜ地方企業が苦戦するのか

地方企業が採用で苦しむ理由をいくつか挙げてみましょう。

1. 大企業との競争に不利

大企業は知名度があり、高い給与や福利厚生を提供できることが強みです。地方企業ではこれらの条件で勝つことは難しく、求職者の目に留まりにくいという現実があります。

2. 地域の求職者人口が減少

特に地方では少子化や若者の都市部への流出が顕著であり、そもそも地元で働きたいと考える人が少なくなっています。

3. 魅力が伝わらない採用手法

「給与・福利厚生」だけをアピールした求人票では、求職者に響きません。魅力が正しく伝わらないことで、応募につながらないケースが多いのです。

地方企業がこのような課題を乗り越えるためには、これまでとは異なる視点で採用活動を見直す必要があります。


特に、大企業と同じ採用手法を選ばないことも大切な戦略の1つです。大企業のように「未来を創る」といったようなフワっとした採用メッセージを発信してはいけません。

働く人が少ないなりの戦略とは何か、働く人にとっての企業の魅力の言語化をするにはどうしたらよいか、そのような地方に特化した採用の考え方にアップデートする必要があります。

ターゲット設定の具体化が鍵

求人倍率が高い中で地方企業が採用を成功させるには、「どのような人材を採用したいのか」を明確にすることが欠かせません。

例えば、「若手人材がほしい」という漠然としたターゲット設定では、誰に向けてアピールすればいいのかが分からず、結果として応募が来ないことになります。

具体的なターゲット設定の例

  • 地元高校や専門学校を卒業した若者。
  • 家庭を持ち、地元での安定した生活を望むUターン・Iターン希望者。
  • 地域の自然や暮らしに魅力を感じて移住を考えている人。

これらのターゲット像をまずはざっくり描き、ターゲットが持つ価値観や希望、趣味、家族構成、生い立ちなどをより具体的に採用活動の軸に据えることで、的確なメッセージを発信できるようになります。

大企業との違いはここです。たくさんの人に届けるために、フワっとした表現を使うのでなく、たった1人のターゲットに届けるメッセージを構築します。

ターゲット設定事例−1:地元で働きたい20代の若手技術者

  • 名前:田中 太郎
  • 年齢:26歳
  • 職業:専門学校で機械工学を学び、現在は都市部の製造業で働いている若手技術者
  • 居住地:都市部のワンルームマンション(職場まで片道1時間の通勤)
  • 背景:地元の高卒で、都会での生活に憧れ専門学校を卒業後に上京。しかし、家賃や通勤時間の長さにストレスを感じ、地元に戻りたいと考え始めている。
  • 価値観・目標
    • 「技術を生かして地元に貢献したい」
    • 「家族と近くに住みたい」
    • 「都会ほどの高収入は求めないが、安定した生活を送りたい」
  • 課題や不安
    • 地元の求人情報が少なく、良い条件の仕事が見つかるか不安。
    • 田舎ではキャリアアップのチャンスが少ないと思い込んでいる。
    • 職場の人間関係や職場環境が自分に合うかが心配。
  • 行動パターン
    • インターネットで「地元で働く メリット」「地元 製造業 求人」といったキーワードで検索。
    • 地元企業のホームページや採用ページを確認し、写真や社員の声に注目する。
    • SNSで地元に戻った同級生の投稿を見て、田舎暮らしの良さに興味を持つ。

ターゲット設定事例−2:子育てを重視する30代のUターン希望者

  • 名前:佐藤 花子
  • 年齢:32歳
  • 職業:都市部の営業職でフルタイム勤務中
  • 居住地:都市部のマンションに家族(夫と3歳の子ども)と暮らしている
  • 背景:地元の大学を卒業後に都市部の企業に就職。結婚・出産を経て、子どもが小学校に上がる前に地元に移住したいと考えている。
  • 価値観・目標
    • 「子どもを自然の多い環境で育てたい」
    • 「家族との時間を増やしたい」
    • 「子育てしやすい柔軟な働き方を求めている」
  • 課題や不安
    • 地元の企業が自分のスキルを活かせるか不明。
    • 仕事と子育てを両立できる職場環境かどうかが心配。
    • 移住後の生活費や教育環境についての情報が少ない。
  • 行動パターン
    • 「地方 移住 子育て」「地元 求人 女性 働きやすさ」といった検索をする。
    • 自治体が運営する移住相談会に参加。
    • SNSで「地方暮らし」のハッシュタグをチェックし、移住者の体験談に注目する。

ここまで細かく設定することで、ターゲットとなる人物が「使いそうな言葉」「気になるメッセージ」「注目してくれる画像や動画」「知りたいと思っていそうな事柄」が想像できるようになります。

この、「想像できる状態」こそが、中小企業が採用メッセージづくりでつまづかない秘訣です。

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ターゲットを絞ることで、応募者が減るのでは?という懸念を示される企業様が多いですが、実際にそのようなことにはならず、ターゲットを絞ったメッセージに反応する求職者は思いの外多いものです。

応募者を増やす・・・という大企業戦略を取るのではなく、応募者の質を高めることこそ、地方企業が取るべき採用戦略なのです。たった1人の応募でも、理想とする方からの応募を勝ち取ったほうが、採用コストが圧縮できることは言うまでもありませんね^^

解決策1:地元密着型の採用ページ作成

地元密着型の採用ページは、地方企業の採用活動における最重要ツールです。
インターネットが普及している今、求職者は企業を「検索」することが当たり前になっています。このとき、求職者に「この会社で働きたい」と思わせる採用ページがなければ、応募の機会を逃してしまいます。

採用ページに盛り込むべきポイント

  • 会社の理念や価値観:どのような思いで事業を行っているのか。
  • 働きやすさの具体例:職場環境や柔軟な働き方の紹介。
  • 地元での生活の魅力:地域ならではのライフスタイルや利便性を強調。

これらをしっかりと伝えることで、求職者に「この会社で働く未来」が想像できる採用ページを作成できます。

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解決策2:口コミ・リファラル採用の活用

口コミ採用、いわゆるリファラル採用は、地方企業にとって低コストな非常に有効な手法です。
特に信頼関係が築かれている従業員や地元ネットワークを活用することで、採用活動を効率化できます。

リファラル採用が成功するポイント

  • 従業員が働きやすさを実感していること:働きやすい職場環境は、従業員から自然とポジティブな口コミを生みます。
  • 地域とのつながり:地元のイベントやコミュニティ活動を通じて会社の存在を知ってもらう。

例えば、ある林業の会社では、リファラル採用を活用し、「地元で働きたい」という求職者の採用に成功しました。

会社と従業員との信頼関係がすでに構築されていることが大前提の採用手法ではありますが、この手法を取り入れるために、会社組織の風土や文化にもメスをいれることになり、結果、今いる従業員さんにも多大なメリットがある取り組みです。

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解決策3:地域と連携した採用活動

地方企業が採用を成功させるためには、地域の力を借りることも有効です。
自治体や商工会、移住支援団体などと連携することで、新しい採用の可能性が広がります。

地域連携の活用例

  • 移住者支援プログラム:地域外からの求職者に対し、住居や生活環境を提供する仕組み。
  • イベントへの参加:地域の職業フェアや説明会を通じて企業をPR。

このような取り組みを積極的に行うことで、地域内外の求職者にアプローチできます。特にUIターン者に「就職先を斡旋できる」ことは、行政にとっても強みとなるため、官民連携の採用施策にデメリットがほぼありません。

行政からのオファーがないとしても、積極的に働きかけたい採用手法の1つです。

まとめ:地方企業が採用で勝ち抜くために必要なこと

求人倍率が高い中で採用を成功させるには、ただ求人を出すだけでは不十分です。
「誰を採用したいのか」を明確にし、採用ページや口コミ、地域連携を通じて、求職者に魅力を伝える努力が求められます。

未だにハローワークや地域のフリーペーパーへの広告出稿に頼った採用を続けている地方企業は多いのですが、それで成果が出ているのであればまだしも、「応募が来ない」「ミスマッチ人材からのエントリーが多い」「新入社員の定着率が悪い」といった課題を抱えているのであれば、採用手法を見直すタイミングです。

採用活動は「会社の魅力を求職者に伝える場」です。私たちは、地方企業が持つ個性や強みを最大限に引き出し、採用市場で勝ち抜くお手伝いをしています。

無料相談では、具体的な採用ページ作成やブランディングのアドバイスを行っていますので、ぜひご相談ください。

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