業界水準に鑑みて、「離職率はそれほど高くないのに、思うように採用ができない企業」が増えています。
離職率が低い=良い会社のように思えますが、それでも採用に苦労されているという話を聞くと「何が起こっているのか?」と不思議に感じます。しかしながら、このような状態に陥っている企業にはある特徴があります。
以下の特徴は「ネガティブな特徴」となります。自社にも同じような仕組みや風土があると感じられた場合は、採用強化の前に、風土改善が真っ先に取り組むべき事項です。
幸せに働く人を増やしてこそ、本当の採用戦略ですからね!
働きやすい会社なのではなく、辞めにくいだけ
離職率が低い企業は、働きやすい環境があり、やりがいを持って長く働いている従業員さんが多い印象を持ちます。そのような会社には、口コミや紹介などで自然と人が集まりそうなものですが、実際には採用に苦労されている企業が多いものです。
離職率からは見えない根本問題に
働きやすい会社なのではなく、辞めにくいだけ
という状態があります。
このような企業に往々にして多いのが以下の例。
- 辞めたい、と言い出せない空気(組織風土)がある
- 辞めても他に行く当てがないから嫌だが我慢して働いている
- ただ、転職が面倒だから長く働いている
- 働いているふりをすれば給料がもらえるので居座っている
辞めにくさ、辞めづらさは企業側だけの問題では有りませんが、採用難に直結する状態が「1」および「2」になります。
考えてみてください。「1」や「2」のような状態(つまり、会社が嫌だと思っている)の従業員さんは、自分が働いている企業を良く評価するでしょうか?自社の求人を、知人や大切な人に薦めるでしょうか?
絶対に薦めませんよね?
むしろ、「あの会社だけはやめておけ」と忠告するはずです。
こういった、企業の”悪い噂”というものは、ローカルな地方企業であればあっという間に広がります。自社の地元での評判を知らないのは経営者だけ、といったところでしょうか。
求人を開始しても地元地域からの応募がさっぱり無い、、、という状態でしたら、一度「地域での自社の評判」を気にされたほうが良いでしょう。結果、評判が良くても悪くても、そこから採用戦略のヒントが生まれます。
従業員はなぜ辞めるのか?について本気で調査し、改善に取り組む

前述の話で、「離職率には現れないが本当は辞めたいと思っている従業員が多い」という問題を指摘しました。
従業員が「辞めたい」と思うに至る原因はなんなのでしょう?
公表されている離職原因を調べると
- 給与が安いなど待遇の問題
- 残業が多い・休日が少ないなどワークライフバランスの問題
- パワハラ・セクハラなど人間関係の問題
などがあげられますが、「離職に至る本当の理由は人間関係が9割」と言われるように、実際は人間関係を苦にして転職を考える従業員さんが多いと考えます。
支援企業の中で実際に多い人間関係の事案は「上司のパワハラ」です。
上司のパワハラ
上司といってもさまざまなポジションがありますが、具体的には「係長」や「課長」といった、現場の部隊を直接管理する中間管理職からパワハラを受けて離職したケースを多く聞きます。
中間管理職は、部下の管理をしつつ、自分の上司からは”売上”や”生産性”といった数字で詰められる非常に辛い立場です。生産を遅らせることができないというプレッシャーから、部下を怒りや圧力でコントロールすることが管理職の仕事だと勘違いしてしまっているのでしょう。
管理職としての心得やマネジメントのノウハウなどの教育をしっかり受けることもなく、いきなり「明日から管理職ね。チームの管理よろしく!」と管理職を預かるケースも多く、我流でチームを率いた結果、パワハラが常態化してしまう職場も多そうです。
また、管理職には人間的(性格的)な向き・不向きがあります。現場で活躍できる従業員が必ずしも管理職として健全な部下のマネジメントが行えるとは限りません。
スポーツの世界では「名選手、必ずしも名監督にあらず」と言われますが、これは仕事においても同じです。自分ができることと、それを他人にわかりやく相手の立場に立って教えられることとは、能力が別だからです。
教える能力というのは、後から開発(学び、習得)できますが、この学びが不十分だと、「なぜ言ったとおりにできないんだ!」という怒りで相手をコントロールすることになり、上司・部下という立場上、関係性がこじれることは必至です。つまりパワハラが起こりやすい状況ですね。
このような状況・状態は、企業のトップが「働くことは我慢すること」という意識があると変えられません。
また、人を育てることに関して、感覚に頼ったり「昔からこうだった」などと、教育カリキュラムが体系化されていない組織でも、同じようにパワハラが起こりやすい状態にあります。
パワハラが起こる企業には、経営者が人材育成に関して確固たる信念が無く、より良い組織文化を醸成していこうという行動が見られない、という特徴があります。
パワハラ気質がある組織は変われるのか?
パワハラ気質を変えられるかどうかは、社長の本気度次第です。
パワハラが横行している企業では、「そもそも何がパワハラに当たるのか」の理解が乏しい傾向があります。
パワハラは、一律に「何をしたからパワハラだ」というものではなく、相手にとって精神的・肉体的苦痛を与え続けることがパワハラになります。この理解なくして、パワハラを根絶することは難しいでしょう。
上司・部下の信頼関係によっても、どこまで言っても大丈夫かの線引が違います。立場によっても、言い方・伝え方で傷つく場合もあります。人間関係が組織文化を作りますので、従業員それぞれが「人間関係に関する気付き」を得られる教育やセミナーを受け続けられる環境こそが大切だと考えます。
組織文化の改革をサポートする事業者やサービスはたくさんありますので、そういった外部の力を頼るのもおすすめです。
企業文化・企業風土が貴社の採用に及ぼす影響
企業文化や企業風土は、採用活動において大きな影響を及ぼします。それは、単に従業員が働く環境としての影響だけでなく、求職者が「その企業で働きたいかどうか」を判断する大きな要因となるからです。特に地方や中小企業においては、企業文化が地元の評判として広まり、採用の成功に直結するケースが多いといえます。
企業文化が求職者に与える印象
企業文化とは、従業員が日々の業務や対人関係の中で感じる「会社の空気感」や「価値観」です。この文化は、会社が意識して構築する場合もあれば、無意識に形成される場合もあります。そして、この文化が求職者にどのように伝わるかで、採用活動の成果が大きく変わります。
例えば、企業説明会や面接の場面で、以下のようなことが求職者に伝わる場合、応募をためらわせる原因になり得ます。
- 上司が部下に怒号を浴びせる場面を目撃する。
- 応募者が社内の雰囲気を「ギスギスしている」と感じる。
- 面接官が一方的に話し、求職者の意見や質問を軽視する。
一方で、良好な企業文化が伝わると、求職者にポジティブな印象を与え、応募意欲を高めることができます。たとえば、
- 従業員同士が和やかにコミュニケーションを取る姿。
- 仕事に対する前向きな態度や感謝の言葉。
- 面接官が応募者の将来の目標や不安に耳を傾ける態度。
これらは求職者に「ここで働きたい」と感じさせる原動力となります。
企業風土が採用成功率に及ぼす実例
悪い企業風土が採用に与える負の影響は、特に以下のような場面で顕著に現れます:
- 口コミや評判の拡散
地元や業界内で「働きづらい」「パワハラがある」といった悪評が広まると、求人情報を見ても応募をためらう求職者が増えます。こうした悪評は、口コミサイトだけでなく、従業員や退職者を通じて直接伝わる場合もあります。 - 採用コストの増加
風土が悪い企業では、求人広告の掲載頻度や採用イベントへの出費が増える一方で、応募数が減少します。そのため、採用コストが膨らむという悪循環に陥るケースが少なくありません。 - 定着率の低下
採用が成功したとしても、悪い風土の中では新入社員が長続きせず、離職率が上がることもあります。特に若い世代は「働く環境」や「人間関係」を重視するため、この影響は顕著です。
企業文化を見直すことの重要性
採用力を高め、持続可能な人材確保を実現するには、企業文化の見直しが不可欠です。以下のポイントを意識し、改善に取り組むことで、求職者にとって魅力的な企業へと変革することが可能です。
- 従業員の声を聞く仕組みの導入
従業員が匿名で意見を伝えられる仕組みを整え、社内の実態を把握することが重要です。これにより、問題点や改善点を明確にできます。 - トップダウンではなくボトムアップの文化構築
経営層だけが意見を出すのではなく、現場の意見を取り入れた文化改善が必要です。従業員が主体的に関与することで、現場に根付いた改善が実現します。 - 外部リソースの活用
組織文化の改革には、専門家やコンサルタントの力を借りることも効果的です。外部の視点を取り入れることで、見落としていた課題が浮き彫りになります。
まとめ:採用成功への第一歩は文化改革から

離職率が低いことは、一見すると企業の魅力的な特徴に見えます。しかし、実際には「働きやすい会社」ではなく「辞めにくい会社」となっている場合、それが採用難の原因になっている可能性があります。悪い企業文化や風土が採用活動に及ぼす影響は見逃せません。
求職者が企業を選ぶ際に重視するのは、単なる給与や福利厚生だけではなく、「安心して働ける環境」や「人間関係の良さ」です。つまり、採用を成功させるためには、まず従業員が本当に満足し、幸せに働ける職場環境を整えることが必要不可欠です。
企業文化を改善するためには、現場の声を聞き、透明性のあるコミュニケーションを重視し、外部の力を借りることも視野に入れるべきです。そして、企業全体で「人を育てる」という視点を持ち、働くことの価値や喜びを共有できる文化を醸成することが重要です。
採用は単なる人数合わせではありません。従業員一人ひとりが充実した日々を送り、企業全体が成長していく基盤を作ることこそ、採用戦略の本質です。貴社が目指す「幸せに働ける会社」への第一歩を、今から踏み出しましょう。